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第18回 「ご意見・ご質問箱」
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的確な人事をするためには?
(大分県 51歳・男性)
私は、中小企業の社長です。
このたび、考え悩んだ末に、数多い候補者の中から若手のA社員を課長に抜擢しました。
課長になったとたんに会社に来なくなったのです。
A社員は、バイタリティーにあふれ、営業成績も抜群で管理能力もあり、課長としての最適任者だと思われたのです。
しかし、A社員自身やほかの社員はそうは思っていなかったのです。
A社員のとって課長職は時期尚早だったかもしれません。大変な重荷となり、A社員は退職してしまいました。
会社としては大変なマイナスです。
社長として慎重に事を進めたのに、なぜ、このような結果になってしまったのでしょうか?
どうぞ、ご教授下さい。
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社長は「裸の王様」
(龍馬社長大学学長、奴田原惇郎)
ご質問ありがとうございました。
経験豊富な経営者が、なぜこのような間違いをしてしまったのでしょうか?
それは「経営者は裸の王様になりやすい」ことが大きな要因なのです。
次のような事例があります。
B社は諸般の事情により、B営業所の所長を社長とし別会社として独立させることになりました。
そこで、この社長が社員を集めて「私についてくる者は残ってくれ」と話すと、営業マン6人のうち1人だけが「所長についていきます」と言います。
所長はこの社員に感激し、男泣き。
しかし、現実は感激したり、男泣きする必要もなかったのです。
なぜなら、この社員が「所長についていきます」といった本当の理由は「自分は仕事ができないNOT社員であり、他者へ就職するのは困難だ。どこも雇ってくれない」と思ったから、所長についていくといったのです。
DO社員であるほかの営業マンは、さっさと他社へ就職していきました。
この社員も数年後に退職。NOT社員だから当然かもしれません。
またC社でいじめがありました。
ところが、このいじめを知らなかったのは、C社長だけ。他の社員はうすうす感じていたようです。
しかしながら、このC社長が知らなかったのは至極当然なのです。
なぜならば社長の前では、いじめの気配はまったく見せず社長には絶対に分からないようにいじめていたからです。
C社長いわく「現在、このいじめ問題が世間で広く取りあげられているが、現実に自分の会社で起こるとは夢にも思わなかった」と。
これらの社長は、人生の裏表も、本音と建前も十分に承知している経験豊富な経営者のはずなのに、このようなたいへんな間違いを犯す結果となってしまいました。
これらのことより「経営者は、社員の本音や真意を最も認識しにくい立場にある」ということが分かります。
同僚とは本音で接しますが、経営者には建前が優先します。
自分を悪く思われたくないのが人情です。
このように考えれば当たり前のことかもしれません。
そのうえ、社長など経営者の取り巻きは、ごますりが非常に多いということです。
こうした社員は「自分たちにとって都合の悪い真実」は、絶対に社長には知らせないのです。
逆に分からないようにするのです。
このようなごなすり社員で自分の周りをかためている社長を数多く見ます。
大企業にも非常に多いのが実状です。
だから、現在のような産業構造の大変革期には、もちこたえられず、(大企業でも)倒産・衰退する企業が続出しているのです。
まさに「社長は裸の王様」です。
何事も問題解決は、まず現状認識からスタートします。
この現状認識の把握を間違えれば、ここに記述した例のようにその後はすべて間違えます。
経営者の方に一言。
経営者は社員の心を見ぬく努力をしてください。
非常に難しい問題ですが、重要な問題です。
人の心は隠れています。
ずるい社員ほど本当の自分の心を隠します。
経営者は、心を読むべきです。
経営者はこれらのことを十分に認識して、自分から見た社員ではなく「ほかの社員から、その社員がどのように見られているか」を客観的に考えて何事も判断すべきです。
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