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第21回 「ご意見・ご質問箱」
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社員持ち株制度の注意点は?
(岐阜県 47歳・男性)
私は、中小企業の専務ですが、モチベーション向上の一環として社員持ち株制度を採用したいと考えています。
この制度を採用するにあたって特に留意すべき点についてご教示ください。
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社員持ち株制度のリスク
(龍馬社長大学学長、奴田原惇郎)
ご質問ありがとうございました。
結論から申します。
社員にやる気を持たせる目的で、社員持ち株制度を採用するのであれば止めておいたほうが良いでしょう。
何事もメリットがあれば必ずデメリットがあります。
この制度も同様です。
メリットよりもデメリットの方が多いのが実情かもしれません。
顧問先のT社長から電話が入りました。
「当社の株主総会に出席して欲しい」とのこと。
株主総会の当日。
まさに大モメ。
以前に社員であった株主甲氏と乙氏が、訳のわからない話でT社長にイチャモンをつけています。
自分ではハッキリといわないのですが、要するに
「自分の持ち株を高い価格で買って欲しい」のが目的らしいのです。
T社長から後日電話が入りました。
「当社の株式の評価をお願いしたい」とのこと。
後からわかったことですが、結局はこの評価を大幅に上回る価格でT社長個人が買い取ったらしいのです。
日本企業に限らず、世界の企業も同様。
モチベーション向上の一環として、社員持ち株制度を採用している企業が多いと思われますが、結果的には、社員の士気高揚につながらず、逆に大変なリスクを抱える結果となっている例が多いようです。
社員株主は、会社を辞めるときには株式を持ったままで退職していきます。
社員が自社に永遠に勤めてくれたらよいのですが、そうはいきません。
さらに、仮に社員が辞めなくても、その社員が亡くなれば、その株式は当然その社員の遺族に相続されます。
遺族は自社とはまったく関係がありません。
つまり、社員持ち株制度は結果的に自社とはまったく関係のない株主をつくることになるのです。
また、モチベーションを高めるためのストック・オプション制度。
これも日本企業のほとんどがそのやり方を間違っています。
この権利をだれに与えるかが問題なのです。
日本企業は与え方を完全に間違えています。
自社への貢献度に応じて与えるべきなのです。
某企業本社がある東京・表参道でタクシーに乗ってきた社員同士の会話。
「会社をそろそろ辞めようと思っている」
「おまえはいくら持っているんだ?」
「一つ。それでも十分だよ。会社を辞めて株を売りた いんだ」
その当時、某企業株は一株が一億数千万円。
創業時からの社員に、ストック・オプションの権利を与えていたのです。
これでは若い社員の人生を狂わせてしまいます。
モチベーションが高まるどころか、まったく逆で、やる気を失わせる結果となってしまいます。
社員の士気高揚が目的であれば、社員持ち株制度ではなく、利益実績主義給与制度のように、「実績を上げた(自社に貢献した)社員」に対してのみ「その貢献度に見合ったインセンティブを与える制度」にすべきだと考えます。
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