平成12年12月26日(火)「朝日新聞」記事要約
起業家に龍馬の先見性を
インターネットで経営指導


  急速に進化する 情報技術 (I T) に対応して、高知市中宝永町で経営研究所を開く奴田原惇郎さん(54)は、インターネット上に「龍馬社長大学」を立ち上げた。
  幕末の志士・坂本龍馬のような先見性と起業感覚を中小企業の経営者らに学んでもらいたいと、その名を付けた。
  インターネットの爆発的な普及は独創的なビジネスの追い風になると確信し、中小企業にとって今こそが「平成維新」のチャンスだと訴える。
                          (青木 武志・記者)


  奴田原さんは1980年に会計事務所を開設。企業の財務内容を見比べるうち、同じ規模の同業会社でも経営の良しあしがあるのに興味を覚え、その原因を探り始めた。
  92年には経営研究所を設立。経営指導のノウハウを本にまとめて出版した。
「高知県で儲かる会社を創る本」、「この1冊で会社は儲かる」

  その後、経営指導セミナーなどに講師として招かれるようになった。しかし、2時間ほどのセミナーでは満足にノウハウを伝えられない。
  中小企業の社長は忙しくセミナーに参加しにくい事情もある。
  そこで、いつでも閲覧でき、電子メールなどでやりとりできるインターネット上での経営指導に乗り出した。

  奴田原さんは「経営者にとって最も大切なのは環境適応戦略だ」と力説する。
  企業を取り巻くさまざまな環境にいかに適応していくか。
「I T革命もそんな環境の一つに過ぎないが、その影響を見逃してはいけない」
と言う。
  例えば、ネット販売の普及で問屋、代理店、支店などの必要がなくなり、経済システムが変わる。
  簡単に国境を越えるメールや個人で情報発信できるホームページは、郵便や放送などの役割を奪う可能性もある、と指摘する。

  こうした社会の変化に対応するには、大企業よりも小回りのきく中小企業にチャンスがあるという。
  だが、中小企業のI T活用の現状には厳しい見方だ。

  「高知でも多くの会社が電子商取引に手を出しているが、もうけるのは難しい。
ネットの1番の欠点は相手が見えないことで、だから、余計にいい商品を安く売る必要がある。
  信用性が高い大企業ならまだいいが、中小企業はモノを売るより、I Tを利用したアイデアを出すべきだ」

  そのうえで提言する。

  「成功しているベンチャー企業はほとんど人々の『困っていること』に着目している。
  それを解決するためのアイデアを形にすることが大切だ。
  独創的なビジネスモデルを発明できる企業や個人が、今後のネット社会を制する」

  新しいビジネスの方法を特許化するビジネスモデル特許の出願料は2万1千円。すでに東京や大阪などでは、同特許の出願が活発化しているという。

  「主婦や学生でもアイデアは無限にあるはず。2万円余りでだれでも大金持ちになれるチャンスがあるのだから、高知の人たちも今こそどんどんアイデアを出していくべきだ」


奴田原惇郎  (ぬたはら・あつお)
  土佐市生まれ。
  税理士として、奴田原会計事務所長、奴田原経営研究所社長を務めるほか、県産業振興センターの専門相談アドバイザーとニュービジネス推進事業審査委員、高知商工会議所の専門相 談員などの肩書も持ち、経営指導に積極的に携わる。

  経営指導セミナーでは常に坂本龍馬の家紋が入った羽織を着て「時代を先取りする龍馬のような先見性が必要」と説いている。


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