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第1回 「マイカルが倒産して、
なぜ株価が上がったのか?」
大型スーパーのマイカルが倒産して、株価が上がった。
従来の常識では到底考えられないことである。このことに言及してみる。
マイカルを支援してきたメイン銀行の第一勧業銀行が、マイカルへの支援をようやく打ち切った。これがマイカル倒産の理由。
では何故にマイカルが倒産して株価が上がるのか?
その原因は、いっこうに進まない我が国の銀行における不良債権処理問題にある。
次の表を見て頂きたい。
債 権 の 区 分 |
引 当 率 |
正常先債権 |
健全な企業向け融資 |
債権額の1%未満 |
要注意先債権 |
赤字企業向けなど
回収に注意が必要な債権 |
債権額の3〜5% |
【不良債権】
要管理先債権 |
元利返済が3カ月以上延滞しているか、
または貸し出し条件を緩和している融資 |
債権の
無担保部分の
15% |
破たん懸念先
債権 |
債務超過など、
経営が困難な企業向け融資 |
債権の
無担保部分の
70% |
実質破たん先
債権 |
法的整理を申請した企業などへの融資 |
債権の
無担保部分の
100% |
破たん先債権 |
銀行は、上の表の「債権の区分」の「引当率」に応じて貸倒引当金への繰り入れを実施している。
つまり貸出債権が、
正常債権であれば債権額の1%未満を、
要注意先債権であれば債権額の
3〜5%を、
要管理先債権であれば債権の無担保部分の
15%を、
破たん懸念先債権であれば 債権の無担保部分の
70%を、
破たん先債権等であれば 債権の無担保部分の
100%を
それぞれ貸倒引当金へ繰り入れるのである。
(貸倒引当金へ繰り入れるということは、損益計算書上で経費として処理をすることである。)
さあ問題は、倒産したマイカルはどこに入っていたかである?
当然に「破たん先債権」等の不良債権の方に入っていたと思われるのだが、実は「要注意先債権」に区分されていたのである。
つまり貸倒引当金への引当率は、何とたったの債権額の3〜5%。
これは我が国の銀行が、まだ大丈夫だと考えていた企業が倒産したことを意味している。
外国人株主に限らず、日本の銀行のこの貸出債権の区分に大多数の人々は大変な不信感を持っている。
「今回の第一勧業銀行のマイカル支援打ち切りに
よって、日本の銀行がようやく重い腰を上げて、
本気で不良債権の処理にふみ切ったのだ。」
と考えて株価が上がったのである。
「我が国の景気が一向に回復せず、株価が一万円を
割ったのも、我が国の銀行経営者に重大な責任
がある。」
ということがこのことから立証された。
我が国の銀行が本気で不良債権の処理を進めたならば、株価は必ず上昇する。
しかしながら、この不良債権処理は幾らやってもキリがない。
なぜならば我が国の不良債権は、次から次へと竹の子のように生まれてきているからである。
しかしながらやるしかない。
そうしないと、日本の経済は本当に取り返しが付かなくなる。
それと同時に私は、我が国に新しい産業が育つ仕組み作りが早急に必要であると考えている。
その為には、銀行員に人を見抜く眼力(将来伸びる企業を育成する力を持った経営者を見抜く洞察力)を付けさすことである。
そしてそれらの素晴らしい経営者には、担保主義ではない融資を実行することだ。
つまり担保が全くなくともまたは担保が不足していても融資を実行することである。
大変難しいことだが、それをしないで不良債権処理だけを進めたならば、残念ながら我が国の経済は本当に駄目になる。
「早く眼力を持った銀行員を育成すべき。」
このことが今後の我が国を発展・繁栄さす唯一の手段である。
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